- 作者: 七河迦南
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/07/27
- メディア: 単行本
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2010年7月、書き下ろし刊行。
鮎川賞受賞作『七つの海を照らす星』の続編となる連作短編集。本作だけでも楽しめるが、やはり前作から続けて読んだ方が、作品への感情移入度は異なると思われる。
4つの短編の間に、メインとなる「冬の章」が挟まれた連作形式。
小学六年生の一之瀬界は四年前、Y県の南端近い崖下の道路に倒れているところを発見された。26歳の母親は崖の途中で倒れて亡くなっていた。界が北沢春菜に語ったのは、母親が界を崖下に落とそうとしたことだった。その理由は。「春の章-ハナミズキの咲く頃」。答えの伏線を露骨に書き過ぎており見え見えではあるのだが、母親の愛情を書くという点では悪くはない。
養護施設対抗のサッカー大会で、城青学園のチーム全員が試合終了後、姿を消してしまった。会場は観客で囲まれ、通路は人気者のメンバーに声をかけようと他の学校の女生徒たちが陣取っていたにもかかわらず。「夏の章-夏の少年たち(ザ・ボーイズ・オブ・サマー)」。チームまるごと誘拐というのは何作かあるが、失踪となると思いつかない。トリックそのものはありきたりかもしれないが、それを成立させるための細かい部分がよくできている。本作品中のベスト。
小中学生の学習会で、入所したばかりの樹利亜が皆に見せていた、前の学校でもらったお別れの寄せ書きが消えてしまった。唯一機会のあったエリカに疑いがかかり、本人も認めながらも返そうとしないし、どこに隠したかもわからない。「初秋の章-シルバー」。こちらは「なぜ」の部分が重要なウェイトを占めているが、正直言って重すぎる。子どもって結構残酷なんだろうな……。
5歳の望は三年前、水商売の母親がDVに耐えかねて逃げ出し、やくざの父親が母親を助けた男を半殺しにした罪でつかまり、七海学園に来た。その父親が出所したとの連絡が入った夜、望宛の荷物を届けに来た宅配のおじさんの後ろから、一人の男が娘に会わせろと押しかけてきた。「晩秋の章-それは光より速く」。意表を突く展開だが、小説だよなと思って読んでしまうと仕掛けがすぐに浮かんできてしまう。
学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件の真相は。「冬の章」。
個々の短編に事件を解く鍵が散りばめられているのはよくある構成だし、最後に意外な展開が待ち受けているのもよくある話。まあ、確かに衝撃的な内容であったことは事実だが、感心するものではない。「冬の章」に違和感があったので、読み終わってみてフェアプレーに則っているよなと思ったこともあるが、それ以上に、単に読者「だけ」への衝撃をもたらす構成に飽きが来ているというところが大きい。特に前作に寄りかかっている部分があるところも、つまらなさに拍車をかけた。これって結局、作者の自己満足でしかないだろうか。
単純に学園の登場人物をめぐる青春小説として仕立て上げた方がまだ感心しただろうが、それだけではありきたりすぎることも事実。アルバトロスの下りなんか結構感心したのに、余計な仕掛けをしてしまって台無しにした感がある。評判との落差が大きかった。