- 作者: 市川憂人
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2017/09/21
- メディア: 単行本
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一方、<ジェリーフィッシュ>事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査してほしいという依頼を受ける。ところが両者との面談の後、旋錠された温室内で切断された首が発見される。扉には血文字が書かれ、バラの蔓が壁と窓を覆った堅固な密室状態の温室には、縛られた生存者が残されていた。
各種年末ミステリベストにランクインした、『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!(粗筋紹介より引用)
2017年9月、書き下ろし刊行。
鮎川賞受賞作が面白かったので、第二作も買ってみた。U国P署のマリア・ソールズベリー警部と九条漣も引続き登場。連続殺人事件の上、密室も出てくるのだが、本格ミステリというよりも、昔懐かしの因縁ドラマと言った方が正しい作品だった。
「プロトタイプ」の章では、テニエル博士の一家に保護されたエリックの物語。実はエリックは秘密を抱えていて、というよくある展開から、怪物という実験対七十二号が暴れ回るというちょっと意外な展開へ。一方の「ブルーローズ」の章では、完全な青バラを作出したテニエル博士とクリーヴランド牧師の話であり、密室状態の温室でテニエル博士の生首が発見され、しかもアイリーンという13歳の少女が縛られて残されていた、という展開。さらに連続殺人事件が発生する。
勘のいい人なら、大まかな事件の構図は分かってしまうだろう。密室トリックや連続殺人はあくまで添え物でしかない。本作品は、青いバラをめぐる因縁ドラマである。しかし、最後の最後であっと言わされたのは事実。まさかと思わせる犯人ではあったが、説得力に欠けていることも事実。確かに青いバラは“幻”の存在だったが、もう少し囚われるような表現があってもよかったのではないだろうか。
マリアと漣のやり取りも楽しいし、登場人物のキャラクターも立っている。エリックとアイリスのやり取りをもう少し見たかったというのは、おっさんの反応だろうか。読んでいて楽しかったことは間違いない。ただ、本格ミステリの面白さとは別の部分で。