平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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笹本稜平『孤軍 越境捜査』(双葉社)

孤軍 越境捜査

孤軍 越境捜査

警視庁捜査一課特命捜査対策室特命捜査第二係の鷺沼友哉は帰り道、尾行されていることに気付いた。もしかして監察か。ここ最近は部下の井上拓海と、六年前に大田区で起きた強盗殺人事件を追っていた。独り暮らしの老人が殺され、財布や預金通帳等が盗まれた事件である。しかし鷺沼らが近所から聞いたのは、数億円の箪笥預金があったらしいということ。一人娘にはアリバイがあったが、怪しいところがある。一人娘は五年前に離婚し、幼馴染みだった村田政孝と再婚していた。村田は何と、今年の春に着任した首席監察官だった。六年前の捜査本部は、不自然な形で解散されていた。三好係長の指示の元、村田の周辺を追う鷺沼たちだったが、村田の妨害の手が迫ってきた。金の臭いを嗅ぎつけた神奈川県警瀬谷警察署の不良刑事、宮野裕之や元ヤクザでイタリアンレストランのオーナー・福富、井上の恋人である碑文谷署の山中彩花刑事も巻き込み、鷺沼たちは事件の真相を追う。警察をやめさせられるかもしれないという時間との戦いの中で。

『小説推理』2016年1月号〜2017年2月号連載。加筆訂正のうえ、2017年9月、刊行。



「越境捜査」シリーズ第6作。今回は首席監察官たちとの戦い。またまた警察官僚トップグループと向き合うという展開だが、相手側が妨害するわりには鷺沼の部屋を見張らないとか、何となく間が抜けていると思わせるのは毎度のこと。どこで彼らが集まり、どこで作戦を立てているかなんて、尾行すればわかることだし、こっそり鷺沼の部屋に盗聴器ぐらい仕掛けられないものかと思ってしまう。

今回は首席監察官とその周辺たちを追うことになるのだが、過去に色々便宜を図ってもらったとはいえ、強盗殺人事件についてここまで不自然に捜査を止めさせられることができるのかも疑問。自分にとばっちりが来ないよう、何らかの対策ぐらい立てそうなものだが。

このシリーズは、鷺沼たちの相手側がどうも間抜けに見えるのが欠点。もちろん相手が完璧だったら、吹けば飛ぶような鷺沼たちの立場だったらあっという間にどこかへ飛ばされたり消されたりするだろうから、作者としては仕方のないことなのだろうが、それにしてももう少しうまいやり方は無いのだろうか。

まあ、鷺沼と宮野のやり取りは読んでいて楽しいし、最後に一発大逆転というのもおなじみのパターンながら読者を満足させるやり方である。今回は最後にスッキリした終わりかったので、読後の感想としては満足。不満点は多々あるが、そういうものだと思ってあきらめて読めば、楽しめるというものだ。