平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ネルソン・デミル『将軍の娘』上下(文春文庫)

将軍の娘〈上〉 (文春文庫)

将軍の娘〈上〉 (文春文庫)

将軍の娘〈下〉 (文春文庫)

将軍の娘〈下〉 (文春文庫)

合衆国陸軍犯罪捜査部、相手が将軍でも逮捕できるこわもて集団。その通称CIDのブレナー准尉が任されたのは、基地司令官の一人娘でエリート美人大尉が手足を杭に縛られ、全裸で絞殺されたという、まさに猟奇事件。相棒のレイプ専門の捜査官サンヒル准尉はかつての恋人だ。N・デミル独壇場のミリタリー・サスペンスの傑作。(上巻粗筋紹介より引用)

事件の萌芽は、全裸で絞め殺された将軍の娘で陸軍のホープ、新兵募集のポスターのモデルでもあったアン大尉のウェストポイント士官学校時代の一つの出来事に起因しているのが明らかにされてくる。しかし、陸軍犯罪捜査官ブレナー准尉には陰湿な圧力がかかりはじめた。著者ならではの軍人たちの特殊密室社会を描いて面目躍如。(下巻粗筋紹介より引用)

1992年10月、発表。1994年5月、邦訳刊行。1996年12月、文庫化。



ネルソン・デミルの7作目で代表作の一つ。基地司令官の一人娘で美人のアン・キャンベル大尉が全来で殺害されるという猟奇事件を、陸軍犯罪捜査部捜査官のポール・ブレナー准尉が、かつての恋人であるシンシア・サンヒル准尉とともに追う。

陸軍内部という閉じられた特殊空間のなかでの捜査ということで、全く知らない世界を紹介してくれるという点では面白かった。事件背景を追ううちにアンの振る舞いや、過去の事件などが明らかになっていくのはわかるのだが、テンポがある割にダラダラ感が強いのはなぜか。いくら情報秘匿が当たり前の陸軍とはいえ、内部であったらもっと噂になっていてもおかしくはない。犯人にも意外性がなく、気が付いたらわかっちゃいましたというのでは、捜査の過程を楽しむこともできない。FBIに捜査を引き渡すというタイムリミット・サスペンスの部分があるにもかかわらず、切迫感も感じられない。

ブレナーの一人称視点で話は進むのだが、所々に入る皮肉がこれまたつまらない。あまりにも斜に構えすぎていないか、この主人公。

これがアメリカではベストセラーなんだから、よくわからない。単に自分の読み方がおかしいだけか。アンの悲劇を描くならもっと重厚なストーリーにすべきだと思うのだが。それとも逆に、これだけわかりやすく読ませるための筆だということだろうか。