平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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笹本稜平『失踪都市 所轄魂』(徳間書店)

失踪都市: 所轄魂 (文芸書)

失踪都市: 所轄魂 (文芸書)

江東区亀戸の空き家で完全に白骨化した死体が二体発見された。住んでいたのは八十代の老夫婦。検死官は二人とも他殺と断定したが、監察医務院は自然死と結論し、一課の管理官も事件性を認めなかった。城東署の葛城邦彦は、息子の警視庁特命捜査対策室管理官・俊史の協力を得て捜査に乗り出すが、本庁サイドの動きは鈍く、本来なら立ち上げるべき捜査本部を一校の設立しようとしない。やがて浮かび上がった敵に、葛木父子と捜査陣は震撼する――。(帯より引用)

『読楽』2012年6月号〜2013年7月号連載。単行本化にあたり加筆修正し、2014年7月刊行。



『所轄魂』に続く第二弾。所轄の刑事である父親と、キャリア警視である息子の活躍が面白く、第二弾に期待をしていたのだが、読み終わってがっかりした。読んでいて面白い部分はあるのだが、結局警察上層部との闘いになってしまう展開なのである。所轄と警視庁捜査一課との意地のぶつかり合いなら楽しめるのだが、上層部の悪玉とのぶつかり合いでは、「越境捜査」や「素行調査官」と何の変わりもないわけである。これを「所轄魂」シリーズでやる意味は無い。

警視庁特命捜査対策室管理官である葛木俊史のハッスルぶりには好感が持てるし、所轄の意地を見せようとする葛木邦彦たちの奮闘には応援を送りたくなる。読んでいて楽しいことも事実。事件の真相も少々意外なところに着地しており、驚きはあった。多分先の不満は、笹本作品を追いかけているからかもしれない。ただ、ただ、作者にはこの手の「逃げ」をしないでほしいのだ。現場の苦労を知らずに階級意識を持つキャリアを叩くのは楽しいだろうが、このシリーズはそれとは別の方向で頑張ってほしかった。