- 作者: ノーマン・ベロウ,武藤崇恵
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2006/01/01
- メディア: 単行本
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1950年、発表。2006年1月、邦訳刊行。
ノーマン・ベロウと言われても全く知らない作家だった。1902年生まれで、人生のほとんどをオーストラリアやニュージーランドで過ごしたらしい。1934年、The Smokers of Hashishでデビュー。1957年までに長編20作を発表。版元は貸本系出版社だったとのこと。本書に出てくるランスロット・カロラス・スミス警部は作者の過去4作の名探偵役として登場する。
雪に覆われた道の中央にある蹄の足跡を、みんなで呑気に追いかける姿は呑気というか、のどかというか。伝説がある木に男の死体がぶら下がっており、足跡は消えているという、不可能趣味が好きな人にはたまらない設定。だが、これが全然面白くならない。不可能趣味というのはあくまで周囲がドタバタするユーモアとか、恐怖する怪奇要素とかがないと、これだけつまらないものなのだと改めて知ってしまった。せめて名探偵役がエキセントリックならよかったのに、これがまた淡々と事件を解くだけ。これじゃ、せっかくの不可能犯罪も魅力半減である。
ましてや、蹄なんてだれかがスタンプのように型を押したなんてわかりそうなものなのに、登場人物が怪奇現象だって騒いでも興醒めするというか。
こういう作品を発掘したことには素直に感心するけれど、本国で売れなかったというのもわかる気がする。例え黄金時代に出版されていたとしても、うけなかっただろう。本格ミステリは謎だけがあっても、通用しないものなのだ。