平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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北夏輝『恋都の狐さん』(講談社文庫)

恋都の狐さん (講談社文庫)

恋都の狐さん (講談社文庫)

豆を手にすれば恋愛成就との噂がある、東大寺二月堂の節分。奈良の大学に通うまじめな理系女子の「私」は、二十年間彼氏なし生活からの脱却を願った。大混乱のなか、やっと拾った獲得物からこぼれ落ちた鈴を拾ったのは、狐のお面に着流し姿の奇妙な青年。素顔を明かさぬ「狐さん」との衝撃的な出会いだった。(粗筋紹介より引用)

2012年、第46回メフィスト賞受賞。2012年2月、講談社よりソフトカバーで刊行。2014年3月、文庫化。



メフィスト賞にしては珍しい恋愛小説。他の要素は一切なし。てっきり人外の妖怪とでも恋愛に陥るのかと思ったが、単にある事情で狐の面をかぶり続ける青年に、生まれてから今まで彼氏ゼロの真面目な大学生が恋した、というだけの話。もうちょっと面白い話があるかと思ったが、ただ奈良の街を紹介し、いつのまにか恋してしまった、というだけの話なので、盛り上がりも何もない。恋愛物を書くのなら、もうちょっと心の動きを丁寧に描くべき。そもそもなぜ恋心を抱くようになったのか、さっぱりわからない。何とも都合のよい展開である。

作者は大学院修了の理系女子、とのことだが、過去に恋愛小説を読んだことが無かったのだろうか。多分初恋?なのだから、もう少し恋に対するときめきといったものを描けないようであれば、恋愛小説を書く必要はない。逆に大人の恋愛小説を書きたいのであれば、もっとドロドロとした要素を書けるようにならなければだめだろう。何もかもが中途半端。単なるガイドブックといっていいような奈良の紹介も、もう少し心を込めて書いてもらいたい。

いかにも続編がありそうな書き方だが、これではとても次作を読む気が起きない。まだまだ勉強が足りない。