平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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霞流一『スティームタイガーの死走―大列車殺人―』(ケイブンシャノベルス)

コハダトーイの小羽田伝介は、設計はされたものの幻に終わったC63型蒸気機関車を心血注ぎ再現させた。しかも彼は虎徹と名づけたその機関車を本物(’’)の中央線では走らせようとした。その記念すべき日、出発地の東甲府駅で死体が発見された。不吉な予感を抱く伝介。果たしてその予感は走行中の虎徹が忽然と消えるという驚愕の結果となって当たってしまう。消えた虎徹はどこへ…そして死体との関連は? 書き下ろし長篇推理。(粗筋紹介より引用)

2001年1月、書き下ろし刊行。



バカミスの雄、霞流一の7作目。どうでもいいが、著者紹介でバカミステリ大賞受賞なんて書くと、本当にそんな賞があるのかと思う読者もいるんじゃないかと思ってしまう。

粗筋紹介だけ見るとまともだが、中身はとんでもない。一応主人公?は警視庁の警部である唐須太。とはいえマゾ体質だし、特別列車の乗車券を職権乱用で入手するような情けない男。そんな唐須をカータと呼ぶのが、唐須が通う漢方委員の女性経営者、蜂草輝良里、三十五歳。カータはキラリの親友で警視庁検視官の女性を誘う予定だったが、仕事があったため、押しかけで彼女が行くことに。一方蒸気機関車の運転手が失踪、しかも処女雪の上の途中で足跡が急に消えると不可能事象。そして運転当日、コハダトーイの創業者かつ相談役でもある伝介の幼なじみでもある総理大臣までがテープカットに参加し、伝介の息子である社長の虎志郎は大喜び。もっとも、ライバル会社の社長も現れて、一悶着。そこへ、抽選に当たった客が駅舎の斜め後ろにある記念館の裏の空き地で死体となって発見される。一方、蒸気機関車は二人組の男に乗っ取られる。多くの客やキラリは逃げられたものの、カータを含む一部の客は場内に取り残されたまま。さらに全身の皮膚がはがされた状態になった死体がコンパーメントの中から発見される。そして最後、中央線を走っていたはずの蒸気機関車が姿を消してしまった。

こうやって書くと不可能事件が連続して続く緊迫した展開になるはずなのだが、如何せん登場人部がギャグなせいか、コメディな展開になってしまうのはいつものこと。何か勿体ない気もするのだが、列車を消すトリックなど、この展開以外では不可能というか、怒りだしそうなぐらい笑えるものなので、仕方のないところかも。それにしても、冒頭の敏腕という言葉が全く似合わない社長とか、本当に警視庁の警部かと言いたくなるぐらい情けないカータとか、本当に一病院の経営者なのかと言いたくなるぐらい勇ましいキサラとか、本当に列車強盗犯かと言いたくなる二人組とか、まあ、深刻になりそうな展開をよくぞここまでコメディにしてくれたものだと言いたい。一応、本格ミステリの体には仕上がっているが。

ある意味呆れかえりながらも読んでいたら、最後にオッと驚く展開が立て続けに。伏線は無かったようだが、まあこれは霞流一だから許せるか、といったもの。まあ、色々な意味で、最後まで驚かせてくれる作品ではあった。

特筆すべきは、この内容をこのページ数で収めたこと。ノベルス版でわずか200ページ。もっとも、これ以上読ませられたら、怒っていたかもしれないが。