- 作者: 田辺青蛙,文倉十
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/12/25
- メディア: 文庫
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2009年12月刊行。第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「生き屏風」を含む短編集『生き屏風』の続編。
県境で里の守り神として暮らしている妖鬼の皐月を狂言回しとしたシリーズ第2弾。「魂魄の道」「鬼遣いの子」「落ち星」「火の山のねねこ」を収録。
今回の連作短編集では、魂追いの少年、縁が登場する。はっきり言って、彼が主人公で、皐月は脇役。魂追いとは、死んで体から出た魂魄を捕まえて売る商売。魂魄はこの世界から続く道を通って、常世へ去っていくのだが、去る前に捕まえるのが彼らの商売。とはいえ、売ってどうなるのかがよくわからない。鯉の魂魄は「凍らせて砕いたものを椀の中に入れればコクが出るし、絵師が顔料に混ぜて魚の鱗でも描けば、それはもう生きているような艶やかな鯉の絵になる」とあるが、他の魂だとどうなんだろう。今ひとつピンとこないまま読み始め、なんとなく皐月が前作より頼りなさ過ぎると思いつつ、後半の作品になるほど展開が急になる。前作に比べ、伝わってくるものが少なかった。設定を説明しきれていない分、独りよがりになっている感がある。オリジナルな設定は悪くないのだが、もっとゆっくり背景を説明してもよかったと思う。
それでも続きがあるような終わり方。だから余計にもどかしい。