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1996年、第16回横溝正史賞佳作受賞。加筆修正のうえ、同年5月刊行。
ゴルフは日本でもかなり人気のあるスポーツだと思うが、ゴルフそのものを扱ったミステリはあまり多くない。作者はレコード会社勤務と書かれていたが、ゴルフについてはどうなのかあとがきを読んでも書かれていない。多分、趣味としてゴルフをしている人なのだろう。ただ、書かれている内容はゴルフがわからない人でも楽しめる内容であるし、またゴルフを知っていればより一層面白くなる内容である。
話の筋は二つ。一つは箕島の恋人が殺された謎。そしてもう一つは全日本高校ジュニア選手権。一章ずつ交互に書かれており、どちらも箕島が関わってくる。このうち選手権の方については雅志と一緒にラウンドを回っている優勝候補の筆頭、氏家慎二に関わる疑惑である。殺害されるのは優勝候補の一人であり、同じラウンドで回っていた牧武則。ストーリー上仕方がないとはいえ、彼を殺すこともなかったのにと思う後味の悪さである。
作品の内容は悪くなかったと思う。ただ選評で多くが言っているように、ゴルフ青春小説としては悪くないのだが、ミステリとして読むとやや弱い。特に二つの殺人事件がありながら、それらが密接につながっていない点は、読者に肩透かしを食らわしている結果となっており、とても残念である。
けれど個人的な感想から言えば、第16回の優秀賞である山本甲士『ノーペイン、ノーゲイン』より面白さという点では上ではなかっただろうか。ただしミステリの構成や工夫という点については山本作品より劣る。いっそのことゴルフだけに絞り、ジュニア小説あたりに応募した方がよかったのかもしれない。
作者はその後、2作品を書いて沈黙している。