- 作者: アントニイバークリー,Anthony Berkeley,西崎憲
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1994/12/01
- メディア: 単行本
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1930年、発表。1994年11月、翻訳、発売。
プロローグで新聞記事と、デヴォンシャー警察のハンコック警視の報告書が書かれ、シリル・ピンカートンがシェリンガムを呼んだ旨が書かれている。その同封書類として、ピンカートンの草稿の写しが送られていたことが分かる。そして「ピンカートン氏の草稿」が挟まれ、最後にエピローグとなる構成になっている。
事件自体は地味だし、会話が中心でサスペンス要素があるわけでもなし。それでもシェリンガムが到着してからの展開は、シェリンガムならではの引っ掻き回しがいい意味で事件と小説そのものを動かしている。まあ、それでも退屈に思う人がいるかもしれない。それは否定しない。個人的にはピンカートンと、殺害されたエリック・スコット-デイヴィスの従妹であるアーモレルとの恋愛模様が結構楽しめたが。
本書のすごいところはエピローグにある。ここにきて、初めてバークリーが某作品(タイトルを書くとバレバレなので……)に挑戦したことが分かるのだ。色々な意味で、これはすごい。よくぞこんなことを考えた、と思うとともに、さすが皮肉屋のバークリー、とも思ってしまった。某作品の最大の不満点を、見事に解消している。
ただなあ、本格ミステリに興味のない人から見たら、何ナノこれ、と思う人が居そう。いや、間違いなく居るはず。ある意味、バカバカしい。しかしこれが本格ミステリの面白さだろう。こういうバカバカしさにまじめに取り組み、小説を仕上げてしまうのが本格ミステリの書き手なのだ。
本格ミステリファンならぜひ読んでほしい作品。とはいえ、大抵のファンならもう手に取っているだろうが。