- 作者: 笹本稜平
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2015/07/08
- メディア: 単行本
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『読楽』2013年12月号〜2014年12月号掲載。2015年7月刊行。
所轄魂シリーズ3作目は、元SIT所属警察官による立てこもり犯に、城東署組織犯罪対策課の係長である葛木邦彦が対峙する。西村はSITにいたころ、覚せい剤の売人だった暴力団組員の家へ突入し、拳銃を持っていると誤って判断し射殺した過去があった。警察官辞職後、覚せい剤に手を出した経験があるとはいえ、西村はアンホ爆薬の材料を購入していた。なぜ元妻を人質に立てこもったのか。しかし警視庁のお偉方は本庁にとどまり、SITの部隊を除いて誰も現場に来ようとしない。そして出てきたのは、警視庁の特殊部隊SATだった。SAT狙撃犯隊長の沢木と中里管理官は、強行突破による射殺を強く主張。交渉相手に指名された葛木邦彦は、西村の主張にシンパシーを抱きつつ、息子で警視庁特命捜査対策室管理官である葛木俊史のバックアップを受け、事件の真相解明と人質解放ならびに西村を「生かしたまま」逮捕するための苦闘に挑む。
立てこもる西村と対峙する葛木邦彦の「人間力」が強く出た作品。逆に俊史は後方支援でしかなく、活躍が少なかったのは残念。西村の計画が色々と考えられていて、読んでいて面白い。追う側の邦彦が西村と心を通じ合う展開は、十分に楽しめた。
年末から年始にかけてのタイムリミットサスペンスとなったが、年末年始など特番だらけで立てこもりなどにテレビ局が集中するわけでもないので、狙った時期としては少々疑問。ブログを使った告発など、色々練られている計画なのに、そこだけは少々残念。
まあ、旨く行きすぎ、という点があることは否めない。ただ、それも含めて楽しむのが、こういう作品なんだと思う。