- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/01/28
- メディア: 文庫
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2009年5月、新潮社より刊行。2010年、第12回大藪春彦賞受賞作。2012年2月、文庫化。
久しぶりに道尾作品に手を出してみた。とはいえ、大藪賞受賞作じゃなかったら読む気は起きなかった粗筋でもあった。女の子が酷い目に遭うとか、子供が酷い目に遭うとか、そういう作品は好みじゃない。本作品も、継父が殺され、遺体を捨てに行く蓮の感情を描いたところから、読む気がどんどん失せていった。まあ、道尾作品だから、最後の方で何らかの仕掛けがあるのだろうと思いながら読んでいったのも事実だが。
人間を描くという点についてはそれなりに成功しているだろう。特に蓮と楓の兄妹、辰也と圭介の兄弟の描き方は上手いと思った。どっちの兄弟も、上より下の方がしっかりしているのはちょっと微笑ましかった。ただ、前半が少しごちゃごちゃして読みづらいところと、登場人物が少ないこともあり、ゴール地点が朧気にでも見えてしまうところは少々残念。読み返せば伏線なども綺麗に張っているのだろうと思うのだが、そこまで検証する気にはなれない。
タイトル通り、龍と雨がキーワードになっているのだが、それに引きずられるような重い雰囲気は好きになれない。なんというか、テクニックは認めるのだが、小説としての面白さを感じない作品だった。あっ、橋本満輝の解説は面白かった。ここまで読み取ることができるのであれば、物語も面白く感じられるのだろうなあ、とも思い、少しうらやましくなった。むしろ、ネタバレ部分を除いて最初にこっちを読んだ方がよかったのかもしれない。自分みたいな人間にとっては。
ところで、これがどうして大藪賞なのか、いまひとつわからない。大藪の作品とは似ても似つかないイメージなのだが。