- 作者: 今野敏
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/06/28
- メディア: 単行本
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『小説新潮』2012年3月号〜2013年2月号連載。隠蔽捜査シリーズ長編5作目。
警視庁と神奈川県警の確執は有名で、これを題材とした警察小説も多く見られるが、隠蔽捜査シリーズでこれを使うとは思わなかった。あるいみ手垢の付いた題材を今野敏がどう料理するのか楽しみであったのだが、竜崎の過去の行動や性格から考えるとなんとなく結末の方向性も予想できるわけであり。その方向性が全く変わらなかった、というのが本作品の欠点かな。いわゆる、想定の範囲内の仕上がり。
前半で、竜崎の事が嫌いな野間崎が意外な冴えを見せたり、シリーズで活躍する戸高が核心を突く発言をしたりと、これはと思わせる展開が見られるかと思ったのに、彼らが途中から全く出てこなくなったのは残念。個人的には、竜崎が野間崎か戸高、もしくはSITの下平を連れて神奈川県警に行く展開を妄想していたのだが、叶わず残念だった。
時間との闘いである誘拐事件がテーマと言うこともあり、展開はスピーディー。事件の意外な真相も含め、題材としてはなかなかだったので、過去のシリーズの焼き直しみたいな流れは避けてほしかったというのが本音である。シリーズとして面白かったことは間違いないが。ただ、帯にある「家庭でも予期せぬトラブル」はあまり期待しない方がいい。