平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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飛鳥部勝則『封鎖館の魔』(星海社FICTIONS)

 封鎖館――それは増改築を繰り返し無数の開かずの間を抱えた魔窟にして、妖しき殺人譚が伝わる怪奇の檻。かつて芸術家たちが青春を謳歌した狂騒の館は、令和に至り新たな流血を求めた。密室での顔面切断死体の発生から殺人は連続し、僻地に隔離された館は再び狂騒に満ちる。芸術に身をやつす者たちの狂気の坩堝から、昭和、平成、令和を超えてついに示される「封鎖館の魔」の姿とは――!?(粗筋紹介より引用)
 2026年2月、書下ろし刊行。

 『レオナルドの沈黙』『抹殺ゴスゴッズ』に続く〈妹尾悠二〉シリーズ第3作。
 飛鳥部勝則はデビューの頃ぐらいしか読んでいないので、手を出すのは久しぶり。『抹殺ゴスゴッズ』は気になったけれど、厚すぎたのでさすがに手を出す気が起きなかった。本書は薄かったのと館ものなので手に取ってみる。
 令和7年の三人連続殺人事件を中心としつつ、次の未解決事件が語られる。昭和四十年の愛人の顔切り落とし事件。昭和五十年のサーカス団の猿が花形スターを斬り刻み、逃げる途中で行き止まりの廊下から消えた事件。平成十年に自称占い師が出入り自由な開かれた部屋で脱出しようとしながら餓死した事件。
 出だしはやや説明口調で読みづらかったのだが、慣れてしまえば気にならなくなる。それよりエキセントリックな登場人物群に、ちょっと辟易してしまった。奇妙な言動・行動を、芸術家というだけで読者に納得させようとするのはちょっと首をかしげたくなる。おまけに探偵役の妹尾悠二、ただの謎を解くだけの人なのがつまらない。
 だからトリック自体は面白かったのに、読み終わっても動機に釈然としなかったのは非常に残念。しかも犯人だけでなく、登場人物それぞれの行動が釈然としないのだから、不必要に物語がごった煮状態になっている。もっと話を整理できなかっただろうか。