平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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今野敏『カットバック 警視庁FCII』(講談社文庫)

 特命を受けたFC室が警護する人気刑事映画のロケ現場。潜入捜査官役の俳優が脚本通りの場所で殺された。女性新署長率いる所轄の大森署、捜査一課も合流し捜査が進む。作品のためなんとしても撮影を続行したい俳優やロケ隊。それぞれの「現場」で命を削る者達がせめぎ合う中、犯人を捕えることができるのか。(粗筋紹介より引用)
 2018年4月、毎日新聞出版より単行本刊行。2020年4月、講談社ノベルスより刊行。2021年4月、文庫化。

 

 「FC室」は、フィルムコミッション室のこと。映画やドラマの撮影の際に、ロケ現場で様々な便宜を図っている。室長は長門達男、40歳の警視。元は通信指令本部の管理官。他は組織犯罪対策部組対四課(マル暴)の巡査部長、山岡諒一35歳。交通部交通機動隊の白バイライダー、服部靖彦32歳。交通部都市交通対策課の島原静香25歳。そして地域部地域総務課の楠木肇28歳。長門以外は兼務。主人公、そして語り手は楠木と書いて「くすき」と読む、まるでやる気なしの男である。
 今回の任務は、伊達弘樹と柴崎省一主演の人気テレビドラマ『危険なバディー』の二十周年記念映画を大田区昭和島で撮影するので、その対応をすること。大田区昭和島の所轄は大森署。ということで、大森署の面々と遭遇することになる。
 まあ、この大森署が出てくるので、第一作の『警視庁FC』をすっ飛ばして本作を手に取った。竜崎伸也署長の後任である美貌の女性キャリア、藍本百合子が登場。他にも貝沼副署長、斎藤警務課課長、関本刑事組織対策課課長、久米地域課課長、芦田警備課長、篠崎交通課長、小松係長も登場。貝沼を除いて、藍本所長にデレデレしている姿はちょっとと思ってしまうのだが……。
 俳優が殺されて、戸高が登場。他にも警視庁捜査一課の田端捜査一課課長、池谷管理官、佐治基彦係長、矢口刑事が登場。田端課長は隠蔽捜査やほかのシリーズにも登場し、他3人は安積班シリーズの登場人物である(というのは、解説を読んで初めて知った)。戸高は矢口と一緒に行動するのだが、エリート意識が強いわりに全然使えないので、案内役として同行しているはずの楠木にばかり意見を聞くところは面白い。
 脚本通りの場所、映画の衣装を着て殺されているところからロケ班の中に犯人がいると思われるも、容疑者がどんどん増えていくところはまあまあ楽しめる。モデルにそっくりすぎる口調や行動などは、やりすぎじゃないかと思うのだが。
 第一作を読まなくても、特に支障はない。まあ、謎解きの面白さや、刑事小説としてのドラマは特にない。個人的には隠蔽捜査シリーズの登場人物が出てきたから、まあまあ楽しめた、という程度。それでも、何も考えずに時間つぶしに読むことに徹すれば、それなりに面白くは読めた。