平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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芹澤準『郵便屋』(角川ホラー文庫)

郵便屋 (角川ホラー文庫)

郵便屋 (角川ホラー文庫)

結婚をひかえ、平凡な幸福を満喫していた萩尾和人の前に、ある日突然現れた不吉な影――今日もまたあの郵便屋が、忘れていた忌まわしい過去を配達にやってくる。住所も宛名もない不気味な封筒を、古ぼけた配達鞄にしのばせて……。

日常を蝕む超自然的な恐怖を丹念に描き切った、正統派ホラーの力作。(粗筋紹介より引用)

1994年、第1回日本ホラー小説大賞佳作受賞。1994年4月、文庫オリジナルで刊行。



うーん、ここまでストレートというか、単純な作りのホラーも珍しいのではないか。子供のころにいじめられた被害者が復讐に来るという展開は、特にひねりが感じられない。郵便屋というアイディアにしても、執筆当時でも新しいものではないだろう。これでまだホラーならではの描写に工夫があればよかったのだが、それも特になし。丁寧に書いていることは認めるけれど。よく佳作に拾われたものだと、別の意味で感心してしまった。

作者はこれ1冊だけのようだ。本人も、出版されるとは思っていなかったのではないだろうか。