- 作者: 東野 圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/06/06
- メディア: ハードカバー
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『週刊文春』2010年1月14日号〜11月25日号連載。ガリレオシリーズ最新作。
久しぶりに読むガリレオシリーズだが、この小説を一言でいうと、「そして少年は大人への階段を一歩進んだ」というところだろうか。まあ、殺人事件で大人の世界を知るというのも嫌だろうが。謎解きの部分だけを見るとさほど面白いものではないのだが、殺人事件を巡る人間模様という点では実に面白い。科学というものに対する視線、子供の成長に対し大人がどうすべきか、などといった点に対する東野なりの一つの答えなのだろう。この作品の大きな目玉は、子供の成長物語。正直言って、湯川が子供にここまで接するというのが想像できないのだが、そんな違和感ぐらいかな、この作品で首をひねったのは。
先にも書いたが、謎解きという点ではそれほど面白味はない。動機探しという点ではちょっと面白かったが、解決を読むとちょっと切なくなってくる。善意が別の人にとっては凶器となることを、人は覚えておく必要があるだろう。
書き下ろしの『麒麟の翼』と比べるとよっぽどいい。前作ではかなりがっかりしてしまったが、まだまだ東野ブランドは信用できると思った方がいいだろう。次は『マスカレード・ホテル』が楽しみだ。