- 作者: 松岡弘一
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 1991/10
- メディア: 新書
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1991年、「黒豹小説賞」受賞。
確か「このミス」でこの作者に対し、誰かが「歴戦の敗北王」みたいなことを書いていた記憶がある。この作品でようやくプロとなり、以後B級小説作家として数々の作品を発表することになる。「黒豹小説賞」は祥伝社20周年記念企画として開催されたもので、応募対象はエンターテインメント小説全般。選考委員は新戸雅章、関口苑生、新保博久、三橋暁、祥伝社フィクション出版部であった。ちなみにこの1回限り。ミステリの公募が乱立された頃の賞だが、第1回と謳われていなかったのは正解かも。
主要登場人物全てが異様と言える人たちばかり。特殊捜査班に属し、闇に葬る必要がある事件の時に登場し、主犯の生存率はゼロという一匹狼の刑事冷泉正人。一人で暴力団組織を作り上げたが、実はマザコンで、今では痴呆症の母親を世話することが心の支えとなっている島田元。整形し、女性として理想的な体型を持ちながらも、今も男の逸物を持って男を犯す同性愛者の殺し屋・切り裂きお嬢こと高石明。4人組に嬲られ、妻を強姦されて自殺させられた過去を持ち、その復讐に燃える遺伝子学者香川新太郎。さらに謎の巨足を持つ殺人者。主人公は冷泉と思えるのだが、他の登場人物の個性も強すぎて、誰が主人公なのだかわからなくなってくる。脇役連中もとんでもない行動をとったりするものが多く、本当にここは日本かと思えるぐらいの殺し合いが繰り広げられる(大藪ファンがそんなこと言っちゃ駄目だな)。殺人者の正体そのものはそれほど珍しいものではないと思えるが、登場人物のほとんどがここまで突飛な連中ばかりであるのは確かに珍しい。しかも暴力シーンのオンパレード。ハードアクションが好きな人なら別だが、読んでいて気持ち悪くなってくるのも確か。圧倒的な迫力はあるし、文章もそれなりに読みやすいけれども、これでは他の賞へはとても応募できない。テレビ化も絶対無理。祥伝社もよくこの作品を受賞作にしたな、と本気で感心した。
超弩級B級ハードアクションという言葉がピッタリくる作品。もっともそんな言葉があるのかどうかは疑問だが。そういう作品が好きな人なら話は別だが、それ以外の人には余りお薦めできない。