平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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日月恩『それでも、警官は微笑(わら)う』(講談社ノベルス)

それでも、警官は微笑う (講談社ノベルス)

それでも、警官は微笑う (講談社ノベルス)

東京・池袋署の所管内で連続発生する密造拳銃事件。“キチク”とあだ名される無骨で無口な巡査部長・武本と、“警視庁一のお坊ちゃま”と爪弾きにされる年下の上司・潮崎警部補の凸凹コンビが捜査に乗り出す。銃の出所を探る二人は、五年前の覚醒剤乱用防止推進員の麻薬常用スキャンダルを追っていた、麻薬取締官・宮田を巻き込みながら、背後に潜む巨悪に立ち向かっていく!(粗筋紹介より引用)

2002年、第25回メフィスト賞受賞。同年6月、単行本刊行。2005年4月、ノベルス化。



登場人物にこそやや色付けされているものの、地に足着いた警察小説。このような、ある意味地味な作品がメフィスト賞に選ばれるとは思わなかったが、これだけ書ければプロにしないのは失礼だろう。

国家公務員I種試験合格者のキャリア、潮崎警部補のキャラクターが面白い。実家は三百年以上続く旧家で、亡くなった父親は門弟二万人を超えた茶道の本家家元。家は兄が継ぎ、家族に反対されながらも警察に入ったが、茶道の弟子でもある現警視総監の母親を通し、何買ったら文句を言ってくるため、扱いづらくして仕方がない。実力はあるものの、やはりどこか浮いている感が強く、それでいて正義感があって刑事になりたいという意志の強さも感じられる。コンビを組む武本は武骨な景観そのもののキャラクターで、刑事に憧れる潮崎が尊敬するのもわかるような典型的な設定である。

事件の方は一方の犯行を犯すものの方の視点も交えて話され、武本たちが徐々に核心に近づいていくところを楽しむことができる。一方、奇抜な展開があるわけでもないので、警察小説が苦手な人にはちょっときついものがあるだろう。ただ、個人的には読みごたえがあって楽しかった。大した寄り道もせずに核心に近づいていくところが、いかにも警察小説のテンプレートだよなと思いながらも。警察組織に対する矛盾と不満などもしっかりと盛り込まれ、外さない作家だなと感じた。

読み終わり、一定の作品を書ける実力のある作者と思った。量産の効くタイプで、しかし大きな花火を上げることは無いだろうとも。