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- 作者: 中野順一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/04
- メディア: 文庫
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2003年5月、文藝春秋より単行本化。2006年4月文庫化。
タクトと書かれると好田タクトを思い出す私。どうでもいいけれど。
最後のサントリーミステリー大賞受賞作。当時ほとんど話題に上らなかったこともあり、全然期待せずに読み始めたのだが、思っていたよりは面白かった。キャバレーを舞台にしているけれど、「これは読者サービスですよ」的な描写があるわけでもなく、書き方が丁寧。登場人物も描き分けられているし、しかもただ登場するだけでなく何らかのポジションを与えられているところは巧い。事件の構成自体も悪くない。手堅くまとまった作品であり、受賞そのものは納得。ただし手堅くまとまっている分、新鮮味は足りない。近未来を知ることができるキャストという設定を軽く流しているのは、作品を変な方向へ持っていかないと言う点で悪くないと思うのだが、それでも肝心の花梨という人物の存在感が今一つ。藪蛇としか思えない最後の展開はどうかと思った。主人公のタクトが元天才ピアニストという設定も付け足しで終わっているのは残念。
素人を主人公に据えたハードボイルド作品であり、その展開はやや類型的。まあ、下手な新展開を考えて失敗するよりは、よっぽどましだろう。完成度自体は高いと思った。