平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ポール・ギャリコ『幽霊が多すぎる』(創元推理文庫)

幽霊が多すぎる (創元推理文庫)

幽霊が多すぎる (創元推理文庫)

重すぎる相続税に対処するため、カントリークラブとして開放されたパラダイン館。だが、持ち主の貴族一家が安心する間もなく、奇怪な現象が続発する――部屋をひっかきまわすポルターガイスト。うろつく尼層の亡霊。外から鍵をかけた部屋で、夜な夜なひとりでに曲を奏でるハープ。さらに、客人の身に危害がおよぶにいたり、自体はただならぬ様相を見せ始めた! 騒動を鎮めるために駆けつけた心霊探偵ヒーロー氏の活躍やいかに? 『スノーグース』『雪のひとひら』などで知られる心やさしきストーリーテラーが、ユーモアとペーソスをこめて物語る、幽霊事件の意外な顛末。ギャリコ唯一の長編本格ミステリ、ついに登場。(粗筋紹介より引用)

1959年、「サタデー・イヴニング・ポスト」誌に連載。1960年、イギリスで刊行。1999年8月、本邦初訳。



帯に「ギャリコ唯一の本格ミステリ」と書かれているのだが、そもそもギャリコって誰?というところから始まった。先に巻末リストを見たのだが『ポセイドン・アドベンチャー」』ぐらいしかわからず、それも映画でやっていたな、程度の知識しかない。だからどんな作風なのかということも全く知らないまま読んでみたんだが、普通の本格ミステリだったからかえって拍子抜け。まあ、他の作品を知っていれば、そのギャップに驚いていたのかもしれないけれど。

週刊誌に掲載されたせいか、頻繁に事件が起きるのは少々うるさい気もするが、それを除けば英国風ユーモアを楽しめる作品ではないだろうか。税金に苦しんだ貴族の生活なども楽しめるし、貴族の館や当時の人物描写も面白い。アレグザンダー・ヒーローの心霊探偵という設定もなかなかだが、それ以上によいのは、継妹であるカメラマンのメグ。この手の女性、作品に登場する分としては好み。複数の幽霊事件を丁寧に解決していく展開も好感が持てるもの。なぜ作者はこの探偵コンビをシリーズ化しなかったのだろう。もったいない。

それほど期待していなかったが、意外と面白かった拾い物。