- 作者: 東川篤哉
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/08/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「烏賊川市シリーズ」5作目。2009年、書き下ろし。
今までカッパ・ノベルスで出ていた烏賊川市シリーズだが、今回は単行本ソフトカバーで登場。今までの売れ行きが良かったから格上げなのか、単にカッパ・ノベルスが売れなくなったからか。カッパの失敗は、装丁を変えたことだよな、絶対。余談だけど。
出だしこそちょっと奇妙な死体遺棄劇が繰り広げられるが、第二章からは私立探偵鵜飼杜夫、弟子(で大学生だっけ?)の戸村流平、鵜飼が入っているビルの管理人二宮朱美といったレギュラー陣が登場。留守番電話に入っていた女性からの謎の依頼に応える(という名目)のために、猪鹿村のペンションクレセント荘へ。死体を湖に捨てたはいいが、載ってきた死体の車まで捨ててしまったために歩く羽目になり、しかも道に迷ってクレセント荘へ泊まることになった有坂香織と手伝わされた馬場鉄男。クレメント荘ではリゾート開発をたくらむ不動産会社の課長が来たため不穏な空気が流れる。そして翌日、夜釣りに出かけていたオーナーが川に落ちた死体となって発見される。捜査にはあの砂川警部と志木刑事も現れた。
十乗寺さくらが出てこないのは残念だが、レギュラー陣に登場人物を交えてのドタバタコメディは健在。緊迫した場面でもコメディと化してしまうところは、この作者ならではの面白さ。レギュラー陣に対したバックボーンがあるわけではないので、この本を読んだだけでも十分に楽しむことはできるが、やはりこのシリーズは最初から読んだ方がより楽しめるだろう。
ドタバタコメディながら骨組みはしっかりとした本格ミステリというのが本シリーズの大きな特徴だが、本作ではかなり大がかりなトリックが使用されている。結末を聞くと実際に可能なの?と思ってしまう部分はあるし、それ以前に舞台の位置関係がちょっとわかりづらいため、せっかくの驚きが半減してしまうのはマイナスポイント。それでも最初から散りばめられていた伏線がエピローグまでキッチリ収まったのはお見事。ラストも悪くないし、結構高い評価を得てもおかしくはないと思う。
作者に足りないのは、代表作かな。佳作を連発するのもいいが、ここらで傑作を書いてほしいと思うのは私だけではないはず。