- 作者: ロバートゴダード,Robert Goddard,幸田敦子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1996/10
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一九〇八年に成立したアスキス内閣において、チャーチルやロイド・ジョージとともに若くして大臣に抜擢された、新進気鋭の政治家ストラフォード。晩年このマデイラに引きこもった彼は、大部の
英国の人気作家、ゴダードが1986年に発表した処女作。1996年翻訳。
例によって例のごとく、ダンボールの底から出してきた一冊、いや二冊。このミスで評判がよかったから買ったんだったかな。これは買ってすぐ読むべきだった。面白い。一気に読んじゃったよ。
若き政治家ストラフォードの栄光と挫折を書いた回顧録そのものも面白いし、その謎を元歴史教師のマーチンが追いかける展開もハラハラドキドキ。真相が見えてきたと思ったら突き落とされる衝撃の事実。絶望の裏にあった意外な真相。新たに立ちはだかる謎。衝撃の結末。とても処女作とは思えない完成度。ストラフォードの謎だけでも十分面白いのに、さらに現代にまで謎が広がるその発想力。主人公であるマーチン自身の過去やロマンスすらも物語へ巧みに織り込むその構成力。人が持ち合わせる愛情、信頼、友情、憎しみ、裏切りなどを全て詰め込んだ大河サスペンス。全てが一点に集中するクライマックスと、余韻が続く静の結末。どれをとっても傑作の名に相応しい。
もう一度書くが、買ってすぐに読むんだった。これほど後悔したのも久しぶりである。若島正の解説もオススメである。
なおタイトルの「千尋」を、訳者の幸田敦子はちいろと読ませている。原題はPAST CARINGであり、「千尋」とは関係ない。再版では幸田敦子がその理由を書いている。