平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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山本巧次『開化鉄道探偵 第一〇二列車の謎』(創元推理文庫)

 明治18年。6年前に逢坂山トンネルの事件を解決した元八丁堀同心の草壁賢吾は、井上勝鉄道局長に呼び出された。大宮駅で何者かによって滑車が脱線させられ、積荷から、謎の千両箱が発見された事件について調査してほしいと。警察は千両箱を、江戸幕府の元要人にして官軍に処刑された、小栗上野介の隠し金と見ているらしい。草壁と相棒・小野寺乙松鉄道技手は荷積みの行われた高崎に向かうが、乗っていた列車が爆弾事件に巻き込まれてしまう。更に高崎では、千両箱を狙う自由民権運動家や没落士族たちが不穏な動きを見せる中、ついに殺人が!(粗筋紹介より引用)
 2018年12月、東京創元社ミステリ・フロンティアより『開化鐵道探偵 第一〇二列車の謎』のタイトルで書下ろし刊行。2021年8月、改題、文庫化。

 

 『開化鐵道探偵』が好評だったからか、書かれた続編。前作から6年後の話であり、独身だった小野寺は事件の前年に綾子という女性と結婚している。『開化鉄道探偵』が面白かったので、文庫化を待って購入。
 前作で活躍した面々に加え、綾子が現代っ子っぽい行動で顔を出してくるので、小野寺が頭を抱えているところは面白い。ただ割とあるパターンかな、とは思った。貨車脱線に加え、徳川埋蔵金が絡み、むしろそちらに目が行ってしまう展開はエンタメとしては面白いけれど、謎解きとしてみると誰が事件を起こしたかわかりやすい展開になっている。どちらの路線に進めようとして書いたのかはわからないが、時代背景をうまく溶かし込んだ作品には仕上がった。前作ほど鉄道が絡んでいない気がするのは、ちょっと残念だが。
 いっそのこと、ドラマ化すれば面白くなりそうなんだが、当時のセットを準備するのは大変かな。できれば第三作を読んでみたいので、執筆を期待する。