- 作者: 水上勉
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/11/08
- メディア: 文庫
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「週刊女性」昭和37年5月2日号〜12月26日号まで連載。昭和38年7月、280枚を書き加えて光文社カッパ・ノベルスより刊行。
セレクションと謳うぐらいだから、それなりに面白いところがあるかと思ったけれど、この作品のどこが面白いのかさっぱり分からない。今まで文庫化されてこなかったのも、ひとつには作者が不満を抱いていたからじゃないかと思ってしまうぐらい。同時期に『飢餓海峡』を連載し、かつ加筆の時期も同じ。『飢餓海峡』のあとがきで、「私はこの作品を書いたころから、推理小説への情熱を失っていた」と書いているぐらいだし、『飢餓海峡』に全力を向けていたから、この『薔薇海溝』という作品には手を抜いていたとしか思えない。
謎や背後にある事件そのものもとってつけたようなものだし、主人公もどこに魅力があるのか分からないぐらいもてる(けれど深い関係がないというのも笑える)。意味ありげに出てきた登場人物が何もしないままにフェードアウトするし、警察は素人を平気で捜査や会議に参加させる。最後も唐突な終わり方。タイトルの意味も不明。きれいな女性には薔薇のような刺があるということと謎が深い深い底にあるというようなことでも隠喩したかったのだろうか。
とりあえず約40年ぶりに文庫化されたことだけでもめでたいと祝うべきか。