- 作者: 水上勉
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 文庫
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「大阪新聞」夕刊に1962年9月4日〜1963年5月15日連載。150枚加筆語、角川書店から1963年11月に単行本化。1960年に訂正・削除・加筆の上、カッパ・ノベルスより刊行。水上勉ミステリーセレクション。
水上勉ミステリーセレクションは全冊(といっても、今のところ4冊だが)買っているのだが、読み始めたのは本書が最初。2008年1月に本書が出てから止まっているから、売れ行きが悪かったのかな。まあ、確かに読んでみても、つまらないわ。
作者はあとがきで「山林未解放の悲劇のありさまを、わかりやすい推理小説の中にとけ込ませてみようとした作者の意図は、これで、かなえられたであろうか」と書いているのだが、残念ながら触れただけ、というのが正直なところか。とりあえず殺人事件をいくつか起こして、山林業界に少し触れ、読者受けしやすいように恋愛部分を盛り込んで、といったような、社会派推理小説である。悪い意味で、社会的な問題を背景とした殺人があるだけ、の作品でしかない。それでも、問題の捉え方に訴えるものがあればまだ救いがあるのだが、問題部分に触れてみただけ、というのでは話にならない。新聞連載ということもあるせいか、とりあえず場面場面で盛り上がればいいや、みたいなところしか感じられない作品で、読んでいても苦痛だった。
社会派推理小説がアッという間に衰退したのは、こういう作品を推理小説として取り上げて大量生産した結果なんだろうなということを再認識させられた。つまらなかったが、とりあえず残り3冊も読んでみることにしよう。