- 作者: 笹本稜平
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/10/22
- メディア: 単行本
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警視庁第一機動捜査隊の小松佳文警部補は、相方の斉藤巡査部長と警邏中に通信司令本部からの命令を受け、公園内にある女性の刺殺死体がある現場へ急行した。現場で拾ったのは名刺入れ。その名刺の肩書きと名前を見て、小松は証拠物件を隠匿することを決意した。後日、小松はその名刺の持ち主のところを訪れようとしたが、自宅前で彼は二人の男に命を狙われた。彼を助ける結果となった小松は、自らの出世を夢見て、彼の依頼を引き受けることとした。彼の名前は、警察庁長官と警視総監の椅子にもっとも近いポジションといわれる警察庁警部局長、本田義久警視監であった。
警察内部に蔓延る公私混同と不正。出世と保身の毎日。探偵上がりの本郷が、事件の真相に迫る。
「小説宝石」2008年3月号〜9月号掲載。
笹本稜平の新作は警察内部の不正を探る警察小説。設定そのものはそれほど珍しくないが、主人公が元私立探偵で、警視庁には中途採用されたという経歴が珍しい。本編でも、元私立探偵というキャリアを生かした捜査手法、眼力を示すが、警察官という仕事になれないのか、中盤まではややもたもたした感があった。終盤になってようやく主人公らしい動きを見せるが、どちらかといえば小松の方の印象が強いのは私だけだろうか。
笹本の欠点なのかどうかわからないが、ときどき妙にリアリティな動きを優先してしまい、読者の爽快感を二の次にするところがある。本作でも結末に関していえば欲求不満のたまるところだろう。
本郷や北本、入江といったキャラクター造形が作りすぎているぐらい作っているので、続編でも考えているのだろうか。ただ、ファンとしてはあまりこういったような作品を乱作してほしくないのである。