- 作者: 笹本稜平
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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「小説推理」2006年2月号〜2007年3月号に連載された作品を加筆・訂正。
ここのところ「駐在刑事」「不正侵入」と警察小説を書き続けている笹本稜平の最新作。最初は警察組織の裏金システムや犬猿の仲である警視庁vs神奈川県警を背景とした捜査が続くが、途中からは消えた12億円と、迷宮直前の事件の真相そのものの方に主眼が置かれるようになる。
帯にも「神奈川県警vs警視庁」と書かれているのだが、先にも書いたとおり、話の流れは中盤から大きく変わってしまう。県警vs警視庁という観点は全く消え去ってしまう。これは作者の当初の目論見が異なってしまったのか、それとも最初からの流れなのかは不明であるのだが、多分前者の意見のほうが正解だと思う。宮野や暴力団の福富の言動や行動など、力の使い方はともあれ、夢見る冒険家のイメージしか浮かんでこない。
前半はどちらかといえばシリアスで重いムードなのだが、後半になると、警察の膿を表に出す要素があるとはいえ、コンゲームに近い雰囲気の作品となってしまう。結末直前の、あまりにもご都合主義的な展開は目を覆いたくなるところがあるものの、それでも悲壮感のない明るい結末が清清しい。
はっきり云ってしまえば、連載ならではの失敗作だろう。前半と後半の流れの違いは、作品の完成度といった面からすれば壮絶なくらいのミステイクである。ただ、読んでいる分には楽しい。失敗作と思われるのに、この面白さはいったい何なのだろう。変梃りんな作品である。