平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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馳星周『雪月夜』(双葉社)

雪月夜

雪月夜

組の金二億円をかすめ取り、ロシア人娼婦とともに敬二は消えた。敬二を追って、裕司は根室へ戻ってきた。裕司が最初に訪れたのは、根室でくすぶっていた幼なじみであり、敬二と仲のよかった幸司のもとだった。6年ぶりの再会。ヤクザの息子だった祐司。露助船頭の息子だった幸司。裕司は幸司を殴り、幸司は裕司に嘘をつく。裕司は幸司のものを奪い取り、幸司は裕司のものをかすめ取る。二十数年、二人は憎しみあいながらも常に一緒だった。

二億円を持つ敬二を追っての捜査が始まる。地元ヤクザ、悪徳刑事、ロシアの元スパイ、地元有力政治家などを巻き込み、二億円を求めて、街が狂気に染まった。

「小説推理」1999年6月号から2000年8月号連載。



新刊で買い、文庫本が出てから読む。まあ、いつものことだ。

舞台が変わっても、登場人物が変わっても、やることは一緒。暴力、狂気、破滅。最初のころからほとんど変わっていない。それがこの頃の馳星周だったような気がする。雪と氷に閉ざされた根室の街で繰り広げられる欲望のぶつかり合いは、何もかも真っ白に染める雪と、何もかも奪い取る寒さの中で、マグマのように熱いが、全ては根室の寒さに吹き飛ばされてしまう。雪が降る夜の月はとても綺麗だが、ずっとその場にいることは出来ない。

なんかここまで書くと、根室という街が誤解されるんじゃないかい(苦笑)。読んでいる途中は悪くないけれどね、どこから切っても馳星周、みたいな作品だった。