平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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大藪春彦『戦場の狩人(ウェポン・ハンター)』(光文社文庫)

戦争カメラマンの星島弘は、「死の商人」ゴールドスミス一派に恋人をなぶり殺しにされ、復讐を誓う。だが相手は世界の兵器市場を操る大物だけに手が出せず、しばらくその手下として忠誠を励んでみせる。飛行場の墓場から大量の飛行機部品を奪うなど、実力をつけた星島は……。最新の資料を駆使し久々に著者が書き下ろした問題作!(粗筋紹介より引用)

1984年、光文社文庫のために書き下ろしされた一冊。ウェポン・ハンター・シリーズ第1作。



大藪が長篇を書き下ろすのは『野獣死すべし』『傭兵たちの挽歌』以来ということでいいのだろうか。めったになかったことであるのは間違いない。以後、大藪は星島を主人公としたウェポン・ハンター・シリーズを書き下ろしていくことになる。

簡単にまとめると、粗筋紹介にもあるとおり星島が恋人を殺された復讐を遂げる話なのだが、そのスパンが長すぎ。途中途中の説明が長すぎて、物語の流れを損なっている。それに「最新の資料を駆使」とあるが、大藪にしては珍しく資料に振り回されている印象の方が強い。資料や舞台背景を説明するのに手一杯となり、肝心の物語がごくわずかといった結果になっている。

世界的なカメラマンとなり、かつ死の商人となった星島の活躍は、これからも続く。ヴェトナム戦争以後、どれだけ傷ついても戦争をやめない人類をあざ笑うかのように。