平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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斎藤栄『方丈記殺人事件』(光文社文庫)

方丈記殺人事件 (光文社文庫―古典の謎シリーズ)

方丈記殺人事件 (光文社文庫―古典の謎シリーズ)

方丈記』は、鴨長明が将軍・実朝に当てた密書だった!?――横浜郊南大の宇賀神助教授は、『方丈記』の謎について触れた一通の手紙を残して失踪する。一方、常楽寺三重塔内の密室でサラ金の女社長が、他殺体で発見される。まさに“方丈”(四畳半)での殺人! 二つの事件の関係は……? 「歴史の謎」シリーズ、堂々の第三弾!(粗筋紹介より引用)

1979年8月、カッパ・ノベルスより書き下ろし刊行。1986年6月、光文社文庫化。



奥の細道殺人事件』『徒然草殺人事件』に続く歴史の謎シリーズ第三弾。「歴史の謎」と謳っており、古典作品の裏に隠された真実と現代に起きた殺人事件を融合させたシリーズである。ただ、「裏に隠された真実」については、世間でよく広まっている説を取り上げているだけであり、実際に立証しているわけではない。メインはあくまで、現代の殺人事件の方である。

本書も『徒然草』に隠された暗号を解く展開があるものの、現代の殺人事件とかかわりがあるわけではない点が辛い。歴史の謎が小説への色付け程度の飾り付けにしかなっていない点が残念。現代の殺人事件の方は密室殺人だが、こちらの方はあまりにも大掛かりで、面白みに欠ける。結末のサプライズはあるものの、その点は警察だったら最初に調べるんじゃないかと疑問に思った。

力は入っているものの、肩透かしに終わった感が強い作品。もっとも斎藤栄の代表作の一つだよな、これ。