平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

大藪春彦『沈黙の刺客』(角川文庫)

信原邦夫は、国外逃亡した犯罪者が持ち出した金を奪い返したり、密かに抹殺したりすることを商売としている。今回の仕事は、新富国銀行から20億円をパクった元副支店長吉原と、その親玉である韓国人金を殺害し、横領金を取り返すことだ。報酬は3億円である。信原は、二人の足どりを追って香港、九龍城を訪れた。



今回の信原は、エージェントものと私立探偵ものの中間に位置する主人公という位置づけになる。小さい頃の戦争体験が書かれるのは、この手の主人公にしては珍しい。ただ、その頃の影を背負っているわけではないので、必要な描写だったかどうか、やや疑問が残る。

舞台は香港、そしてモナコへと飛ぶ。後の作品と比べると、街並みや酒、料理、女などの描写が淡泊である。肩慣らしというか、海外を舞台にしたエージェントものが受け入れられるかを試しているというか、とりあえず読者の反応を窺ってみようという感じの作品である。