平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

漂泊旦那の日記です。本の感想とサイト更新情報が中心です。偶に雑談など。

大藪春彦『裁くのは俺だ』(角川文庫)

悪くて強い虚無主義者・毒島徹夫。彼は保守党の実力代議士に雇われた怪文書屋だ。主な仕事は、敵対する政治家を失脚させる情報を入手し、マスコミ等に流すことだ。そしてついに、彼は現職の首相らのスキャンダルを握った!
 ところが彼は、何者かの手によって手錠をはめられ、拷問を受けるミジメな境遇に陥ってしまった。このままでは今回の仕事の報酬はおろか、命までも奪われかねない。しかも毒島の雇い主の代議士も暗殺されたらしい。刻々と危機が迫る中で、彼は罠を仕掛けたやつに復讐することを誓った!

政界の黒幕・実力者たちを、徹底的にやっつける痛快アクション!(粗筋紹介より引用)

「宝石」1968年7月〜1969年12月号連載。



怪文書屋という設定は珍しいが、それを除けばあとは政界の悪者を悪でやっつけるアクションものという設定であり、他の作品とそれほど変わらない。ただ、この主人公、的に捕まるケースが多い。毎回毎回、よくぞ逃げられるものだと、逆に感心する。というか、敵なんだからさっさと殺してしまえよと突っ込みたくなるのは私だけか。

前半は一つのシチュエーションが長く、そして徐々に展開が早まり、事件の規模と反比例するように一つ一つのエピソードに割かれるページが短くなるのも大藪らしい。まだロッキード事件の影も形もない時代に航空機汚職を題材にするところはさすがだと思うが、あとは良くも悪くも大藪春彦、という一品。