- 作者: 大薮春彦
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1987/09
- メディア: 文庫
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
「C・I・Aの暗殺者を消せ」「みな殺しの銃弾」「連隊旗奪還作戦」「“紅軍派”大使拉致す」は『野獣死すべし』以降書き続けられた伊達邦彦ものの短編。英国外務省情報部破壊活動班員時代の作品2編と、情報部を辞めた後の2編である。はっきり言って、このころの伊達邦彦ものは面白くない。伊達邦彦が主人公である必然性もないし、描かれているその姿も精彩を欠く。それでも昔は喜んで読んでいたな。
密輸の仕事とだまされた男たちは韓国に連れていかれ、ヘロインの密輸を手伝わされることになる。しかし本当のねらいは別のところにあった。「瀕死の38度線」。謀略ものではあるが、ページが足りないせいか作者らしい怒りの視点が少ない。
「ジャングルの豹」は南ベトナム民族解放戦線、いわゆるヴェトコンの戦士であるホワン・ミン。ミニ短編5つをまとめたもので、構成そのものが珍しい。ヴェトコン側から描いた日本人の作品は少ないであろうから、もっと書き続けてほしかった。
「われ、サイゴン米大使館を占領せり」はタイトル通り、解放戦線が大使館を占領する話。前の作品とともにベトコン側から描いた作品である。権力による蹂躙に怒りを覚える大藪なら、ベトナム戦争ものはもっと掘り下げることができたに違いない。