- 作者: 夏樹静子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/03
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
1992年、中央公論社より発売された単行本の文庫化。
一見接点のない人物が東京駅のあまり知られざるところで殺害される。そして調べていくうちに、意外な接点が発見される。わりとありきたりなパターンの連続殺人事件ものだが、東京駅という舞台をよく調べており、隠された動機といえるものの舞台も含め、なかなかよく取材されていると感心する。
しかも最後でもう一つトリックを仕掛けるのには感心した。感心はしたのだが、物語の流れから考えると、ちょっと違和感のあるトリックである。本格ミステリならではのトリックだが、現実的な筆致で描かれている作品には似合わない。こうして考えると、本格ミステリに出てくるトリックは、現実的ではない、ファンタジーの世界だからこそ似合うのだろう。
このあたりのことはいつか書いてみたいと思うのだが、そうなると笠井潔を読み返す必要があるので、当分は書かないに違いない(文法が違うぞ)。