- 作者: 夏樹静子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1979/08
- メディア: 文庫
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労務者風の男性が、レストランで逆上し、店長や客の主婦が重傷を負った。一見、発作的犯行のようにみえたが、逃走経路を計算してあったかのような逃亡が気になった。「郷愁の罪」。
桐子は吉森との旅行中、不倫関係にあった湖島を殺害しようと旅館をこっそり抜け出すが、結局何もできず旅館へ戻る。ところが吉森は殺害されていた。「誰知らぬ殺意」。
「田処銀吉」の名がOL殺人事件の容疑線上に挙がった時、佐伯警部補は一瞬鳩尾の奥に鈍痛に似た圧迫感を覚えた。田処は一ヶ月間の暴行未遂事件の容疑者であり、状況は完全なクロだったが、実は狂言だった。もう誤認逮捕はしたくない。「誤認逮捕」。
マンションでOLが殺害された。恋人関係にあった上司は、会社の別の女の子と旅行していたというアリバイがあった。しかし、新聞記者の峯田は首を傾げる。その女の子は、峯田と一緒に過ごしていたのだ。「風花の女」。
歌手の卵だった川奈輝雄が殺害された。容疑者に、プレイボーイだった彼の女友人の一人が上がるが、彼女にはアリバイがあった。「高速道路の唸り」。
東京発博多行きのひかりの中で、女性の死体が発見された。最も有力な容疑者には、アリバイがあった。警察の、必死の捜査が続く。「山陽新幹線殺人事件」。
いずれも警察の捜査を中心とした短編が収録されている。どちらかといえば女性の恋愛を中心としたサスペンスを中心としたものが多い著者にしては、珍しい短編集ではないか。アリバイや奇妙な動機などを中心とした本格推理小説集。手堅くまとめられているし、警察や容疑者周辺の描写などもさすがと思わせるものがあるが、手堅すぎて新味に欠けるところがある。