平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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加藤元浩『Q.E.D. iff−証明終了−』第5巻(講談社 マガジンコミックス)

犯人逮捕時の怪我で入院している水原警部を見舞に来た可菜と燈馬。可菜が洗濯物を取りに行く途中、白衣にサングラスに帽子姿の怪しい男が出てきた部屋を除くと、入院患者の酸素マスクが外れ、心電計も止まっていた。慌てて看護婦に伝え、警備員と一緒に男を追いかけたが、角を曲がった行き止まりの場所で消えてしまった。殺害されそうになった患者は、遺書を残して崖から落ちて重体の大学生。遺書に残っていた失恋の言葉から、大学生の周辺を探った可菜は、動機の在りそうな3人の人物を探し当てるが、いずれも隠し事をしていた。「イーブン」。事件の動機がちょっと弱い気もするが、事件を起こすときはそんなもの、という気もする。犯人の特定もあっという間だし、内容としては今一つ。
独り暮らしの元検事が殺害され、定期的に来ていてた看護師の女性が殴られて倒れていた。しかし家の鍵は全てしまっており、鍵も被害者がもっていた密室状態だったことから、咲坂署は看護師の女性を犯人として逮捕。しかし不完全な密室に疑問をもった水原警部は、使われていない車庫のドラム缶の陰にあった血痕を発見し、女性は釈放された。警視庁捜査一課との合同捜査となり、七夕菊乃が派遣されることになったが、上司の伏見主任は、優秀な水原警部がいながらなぜこのような失態が起きたのか、首をひねる。菊乃は水原警部と会い、事件の複雑な経緯を知る。1年半前、クラブで若い女性が殺害された。女性は大学生に怪しい教材を売りつける仕事をしていたたため、授業料全てを巻き上げられた大学生を咲坂署は容疑者として逮捕した。しかし大学生には、友人たちとカラオケボックスにいたというアリバイがあった。しかし大学生は取り調べを受け、勾留中に首をつって自殺してしまった。この時に取り調べをしていた検事が今回の事件の被害者で、看護師は大学生の母親だった。つまり、看護師には動機があったのだ。しかし彼女が犯人なら、密室にする理由がわからない。菊乃は、たまたま来ていた可菜を通して燈馬に相談する。「不完全な密室」。10月に発売された著者の小説『捕まえたもん勝ち!』の七夕菊乃が登場するコラボ作品。本巻の目玉と言える作品であり、不完全な密室や歪な事件の構造など、複雑な様相を燈馬がスッキリと解き明かす。事件の裏に隠された動機は哀しいものであるが、裁判では相手側も否定するだろうなあ、などと物語とは関係のないところを心配してしまうのは、なぜだろうか。
今回は「不完全な密室」に力を入れていたのだろう。それでも軽く見えてしまうのは、小説の方が忙しかったからだろうか。