人気写真家キャシー・モランの回顧展を訪れた小説家志望のステイシーは、一枚のモノクロ写真と出会う。花嫁姿の女性が海に向かって立つ後ろ姿。だが、女性の手には六連発銃が握られていた。写真に魅せられ小説化を考えたステイシーは、被写体の女性が十年前の撮影時に夫殺しで疑われていたことを調べ上げるが……。法廷スリラーの巨匠が一枚の写真に秘められた謎をサスペンスフルに贈る!(粗筋紹介より引用)
2014年発表。2025年3月、邦訳刊行。
作者のフィリップ・マーゴンは、刑事弁護人として25年努める。1978年に『封印された悪夢』でデビュー。1993年、第三作目の『黒い薔薇』がベストセラーに。1996年に専業作家となり、本格的に小説家として活動。1990〜2000年代に長編八作が翻訳された。本書は20年ぶりの翻訳となる。
作者の名前は聞いたことがあったが、読むのは初めて。著作リストを見ると『ミステリマガジン』に短編が掲載されていたので読んでいるはずなのだが、全く覚えていない。
表紙をめくるといきなり「銃を持つ花嫁」の写真が出てくる。白いウェディングドレスと銃身の長い六連発銃のミスマッチが印象的な写真で目を惹かれる。主人公の一人であるステイシー・キムも同じだった。
第一部は2015年。元弁護士で写真家のキャシー・モランの写真展で、マンハッタンの法律事務所に勤める小説家志望のステイシーがこの写真に魅せられ、この写真を題材に小説を書こうと決心する。
第二部は2005年。カリフォルニアの実業家のレイモンド・ケイヒルが、オレゴン州のシレッツ郡の郡庁所在地パリセイズ・ハイツでメーガンとの結婚式を挙げたが、別荘に戻った夜、何者かに射殺され、コインや切手、アンティークの銃のコレクションが入っていた金庫からいくつか盗まれた。通報者はキャシー・モラン。バーテンダーの彼女は仕事が終わって帰宅中の深夜2時、海岸でウェディングドレス姿のメーガンが銃を持ったまま海辺に立っているのを見つけ、その美しさに思わずカメラを向けた。撮影後、記憶がないという彼女の家に戻って死体を見つけ、事件を通報したのだった。司法次官補のジャック・ブースは捜査を手伝うことになる。
第三部は2000年。地区検事補のジャック・ブースはある殺人事件で、大物麻薬ディーラーのゲイリー・キリブライドを起訴した。裁判所で対峙した弁護士は、キャシー・モランだった。
第一部から第三部まで時を時を戻していくうちに、登場人物の人間関係と因縁が明らかになっていく。第四部は再び2005年に戻り、ケイヒル事件の捜査が続く。そして第五部、第六部は2015年に移り、新たな事件が発生することで全ての事件の背景が明らかになる。
構成が非常に巧み。時を過去に戻すことで主要登場人物の因縁がわかるようになっている。そして2005年の捜査、さらに続く事件を通し、複雑な人間模様を描いていく。そして再び2015年に戻り、スピーディーでサスペンス溢れる展開が待ち受け、誰もが見逃していた証拠により全ての事件の全容が明らかになる。登場人物は多くはないが、主要登場人物の人間関係が複雑。さらに恋慕が重なることで、人物の絡みがより深まっていく。最後の方になるまで着地点が全く見えてこない描き方も上手い。特に一枚の写真の使われ方が絶妙である。
最後までどうなるか分からず、サスペンスとロマンスと謎が絶妙にブレンドされた良作。ベストセラー作家ならではの巧みの腕である。
