平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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三津田信三『碆霊の如き祀るもの』(原書房 ミステリー・リーグ)

 断崖に閉ざされた海辺の村に古くから伝わる、海の怪と山の怪の話。その伝説をたどるように起こる連続殺人事件。どこかつじつまが合わないもどかしさのなかで、刀城言耶がたどり着いた「解釈」とは……。シリーズ書き下ろし最新作!(粗筋紹介より引用)
 刀城言耶シリーズ第9作。2018年6月、書下ろし刊行。

 強羅地方の最西端に属する犢幽村(とくゆうむら)。そこを舞台にした江戸、明治、昭和の怪談「海原の首」「物見の幻」「竹林の魔」。そして同じ強羅地方の閖揚村(ゆりあげむら)から平皿町(へいべいちょう)山道で現在進行形の怪談「蛇道の怪」。閖揚村出身の編集者、大垣秀継から四つの怪談を聞いた刀城(とうじょう)言耶(げんや)は、担当編集者祖父江(そふえ)(しの)も含めた3人で犢幽村を含む強羅地方を訪れる。そこで遭遇したのは、四つの怪談をなぞったかのような連続殺人事件であった。
 四つの怪談だけで百ページ以上。長い。そしてようやく刀城言耶たちが登場するのだが、ここからがまた長い。合計で約二百ページ。相も変わらずフリガナを振ってくれないと読めない名前と地名で、読むのがしんどい。村の位置とか、館の位置図とか図面欲しかったね、これは。わかりにくい。
 ようやく変死事件が起きて、そこからは怒涛の展開が続くのだが、それらがいずれも不可能犯罪。開かれた密室ばかりである。もやもやしたものを残しつつ、最後の方は例によって刀城言耶の堂々巡りな推理が繰り広げられる。
 なんだか、もっとスッキリ書けないものかな、なんて思いながら読んでいた。最初の怪談、ダイジェストにしてほしかったなあ。そして推理の結果や犯人が面白くない。面白かったのは、最初の事件のトリックぐらいな。これもどうにかなりそうな気がするけれど。それに最後にとんでもない展開が待ち受けているけれど、もやもやしか残らないな。
 ということで、長いだけで楽しめなかった。読み終わるのに疲れました。