平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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三津田信三『厭魅(まじもの)の如き憑くもの』(講談社文庫)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

神々櫛(かがぐし)村。谺呀治(かがち)家と神櫛(かみぐし)家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城(とうじょう)言耶(げんや)」シリーズ第一長編。(粗筋紹介より引用)

2006年月、原書房より書き下ろし刊行。2009年3月、講談社文庫より刊行。



本格ミステリとホラーを融合させた刀城言耶シリーズだが、リストを見ていると第1長編を読んでいないことに今更気づき、慌てて未読本リストから探してきて読了。

旧家が対立する村というのは横溝正史を思い出させる設定だが、読んでみると怪異現象の方が強く、かなりホラー寄り。こういう状況下で連続殺人が起きても、あまり恐怖感が迫ってくることはないし、謎解きをしようという気も起きない。正直言って、ダラダラしすぎ。もう少し短くまとめればよかったのに。それでいて最後に探偵役の刀城言耶が最後に事件関係者をみんな集めて謎解きを始めるのだから、どことなくちぐはぐな印象はぬぐえない。シリーズ第1作目ということもあってか、刀城というキャラクターがまだしっかりと固定されていない感もある。

最後に謎解きを始めるのだが、なぜか推理がふらふら。おいおい、ページ数も少なくなるというのに、こんなので大丈夫かよ、と思っていたら、最後にうっちゃられました。なるほど、これをやりたかったのね。正直、嫌いなネタですが、びっくりしたことは事実。違和感があった部分は伏線だったのね、と改めて思った次第。

ただ、成功したかどうかという点では微妙。やはりページ配分、間違えているんじゃないかな。最後こそページ数をしっかり確保すべきだったんだじゃないだろうか。疑問が残る終わり方はホラーだからなのかもしれないが、尻切れトンボと言われても仕方のないくらいあっさりしすぎ。

作者が目指す方向性がまだ小説の中で固まり切っていない、という感のある作品。これはシリーズの他の長編を先に読んでいるための感想かもしれない。悪くはない作品だが。