平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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阿津川辰海『読書日記~かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』(光文社)

 大好物のミステリーを食べて、こんなに大きくなりました――アガサ・クリスティー綾辻行人、エイドリアン・マッキンティ、伊坂幸太郎ジェフリー・ディーヴァー都筑道夫、D・M・ディヴァイン、法月綸太郎、ヘニング・マンケル、山田正紀……など総勢362名、1,018作品。一日一冊以上のペースで爆読する若手屈指の本読み作家が大好きな作家&作品を存分に語り尽くした偏愛ミステリーガイド。この熱量と文字量、どうかしてるぜ。(粗筋紹介より引用)  ホームページ『ジャーロ』に2020年10月から2022年3月まで月2回掲載されている「読書日記」、2022年3月までの解説全11本、そしてエッセイを収録し、2022年8月刊行。2023年、第23回本格ミステリ大賞〔評論・研究部門〕受賞。

 「いったい、いつ読んでいるんだ!?」各社の担当編集者が不思議がるほど、ミステリを読んでいる阿津川辰海の読書日記を中心にまとめたもの。とにかく読んでいる量が凄い。1日1冊でも追いつかないんじゃないかと思わせるほど。さらにジャンルが幅広い。本格ミステリだけでなく、警察小説、ハードボイルド、サスペンス、冒険小説、スパイ小説、ホラー、SFなど色々読んでいる。それも新刊、古典を問わずにだ。そして記憶力が凄い。過去に読んだ本の内容を、よくぞこれだけ覚えているものだと感心する。そして一番すごいのは、悪口を言わないことだ。本を読み続けると、どうしても納得のいかないところ、首のひねるところを責めてしまいがちだ。これだけ本を読んでいたら、他の作品と比較して、不満に思うところを書いてしまいがちになる。しかし本作品にはそれがない。とにかくいいところだけを口にする。作品を愛する者からしたら、嬉しいことだろう。
 ミステリへの愛情があふれすぎる一冊。作者のことが苦手な人がいるかもしれないが、本作品はぜひ手に取ってほしい。