箱根のホテルに飾られていたという一枚の写真、そこには、芦ノ湖に浮かぶ帝政ロシアの軍艦が写されていた。山中の湖に突如出現した軍艦は、軍人たちを降ろした後、一夜にして消え失せたという。この世ならざる謎に御手洗と石岡が迫る。そこには日本とロシアを結ぶ圧倒的感動の物語が秘められていた!(折り返しより引用)
『季刊島田荘司』に発表した作品を改稿し、2001年10月に原書房より単行本刊行。2004年1月、講談社ノベルス化。
そういえば読んでいなかったなと思って手に取った一冊。軍艦が湖に現れ、一夜で消え失せるという謎は、はっきり言って分かりやすい。正直言って、それしか解決手段が思いつかない。もっとも当時それが可能かどうかは全く調べなかった(苦笑)。
もっともそれはおまけみたいなもので、本筋は最後のロシア皇帝ニコライ二世の第四皇女、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァを巡る物語である。アナスタシア皇女生存説は根強くあった。実際に本物を騙る偽物は数多くおり、特にアンナ・アンダーソン(本書ではアナ・アンダーソン)は有名である。
本書はそれらの説に対する島田荘司なりの研究成果と仮説であり、島田荘司らしい壮大なほら話である。好きな人は好きなんだろうが、本気にする人はいないだろうし、まあ笑っちゃうしかないという結論しか出てこない。