平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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小島正樹『武家屋敷の殺人』(講談社ノベルス)

武家屋敷の殺人 (講談社ノベルス)

武家屋敷の殺人 (講談社ノベルス)

探偵役は、若き弁護士とリバーカヤック仲間のフリーター。孤児院育ちの美女が生家探しを弁護士に依頼に来て、手がかりは捨てられたときに残された日記くらいだと言う。具体的な地名はいっさい出てこない代わりに、20年前の殺人と蘇るミイラの謎が書かれた日記をもとに調べ当てると、思わぬ新たな殺人が起こる。

最後のどんでん返しまで、目が離せないジェットコースター新感覚ミステリー。(粗筋紹介より引用)

2009年書き下ろし。



聞いたことのない作者だったが、調べてみると原書房のミステリーリーグで『十三回忌』という作品を2008年に書いていた。単行本デビューは島田荘司との共著で2005年に出した『天に還る舟』(南雲堂SSKノベルズ)らしい。

現代を舞台としながら、タイトルに"武家屋敷"という胡散臭い名前が付いているとこに興味をもって読んでみたのだが、終わってみるとなんだかなー、という印象。

大きな謎→あっという間に解決→また不思議な謎→すぐに解決→また不可解な謎→早速解決→……の繰り返し。このトリック1本だけでも十分に長編が作れるだろうと思うような謎と推理がこれでもかとばかりに叩きつけられる。勿体ないというか、ためがないというか。プロレスにたとえると、メジャー団体のレスラーがフィニッシュとして使っているような大技の数々を、弱小インディー団体のレスラーがゴング開始から使いまくるけれど、そこに至るまでの過程も説得力もないから相手レスラーに全く効かず、ただ大技のコピーを並べて見せているだけの試合、みたいなイメージである。この作品のトリックはたぶんオリジナルだろうから、ちょっと酷な書き方かもしれないが。

この作者が何をやりたいのかはよく分からないけれど、島田荘司みたいな本格ミステリを書きたいのだろうか。それだったら、せめて解決に至るまでのカタルシスというものをもう一度見直した方がいいと思う。トリックの品評会を見せられるだけの長編なんて、読みたくない。少なくとも私は。