平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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高木彬光『人形はなぜ殺される 新装版』(光文社文庫)

人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)

人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)

衆人監視の白木の箱の中から突如消えた"人形の首"。直後、殺人現場には、無惨な首なし死体と、消えたはずの人形の首が転がっていた。殺人を予告する残酷な人形劇。それは犯人からの挑戦状か!?神津恭介がアリバイトリックに挑む。著者の校正用初版本の加筆修正を採った決定版。同時期に書かれた短編「罪なき罪人」「蛇の環」を収録。(粗筋紹介より引用)

1955年11月、講談社の「書下し長篇探偵小説全集7」として刊行。



日本ミステリ史上に燦然と輝く大傑作。何回読んでも飽きることがない。

トリックも推理も素晴らしい。第2の事件のトリックも見事だが、むしろ第1の事件のトリックの方が衝撃的である。第2の事件のトリックは、後年島田荘司が作品中に取り入れているが、使い方が今一つだったので、大傑作が貶された気分になったものだ。

犯人の意外性も見事。途中のサスペンスも大満足。解決の鮮やかさは格別。神津がもたもたしている? そりゃ、これだけの犯人が相手だから仕方がないのだよ。

昔の作品を読むと、当時の感動はどこに!と言いたくなるぐらい古くさかったりすることがあるものだが、この作品は全く別。いつまでも語り継がれるべき、歴史的大傑作なのである。

「罪なき罪人」は1953年4月に「読物」誌に、「蛇の環」は1956年11月に「オール讀物」に掲載された短編である。神津と東洋新聞社の真鍋がコンビを組む、無難な仕上がりの作品である。