平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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ボストン・テラン『神は銃弾』(文春文庫)

 憤怒――それを糧に、ボブは追う。別れた妻を惨殺し、娘を連れ去った残虐なカルト集団を。やつらが生み出した地獄から生還した女を友に、憎悪と銃弾を手に……。鮮烈にして苛烈な文体が描き出す銃撃と復讐の宴。神なき荒野で正義を追い求めるふたつの魂の疾走。発表と同時に作家・評論家の絶賛を受けた、CWA新人賞受賞作。(粗筋紹介より引用)
 1999年、発表。2000年、英国推理作家協会ジョン・クリーシー・ダガー賞(最優秀新人賞)受賞。2001年9月、邦訳刊行。同年、日本冒険小説協会大賞(海外部門)受賞。

 

 アメリカの覆面作家、ボストン・テランの処女作。物語としては非常に単純で、粗筋紹介通りの内容そのまま。復讐に燃える刑事のボブ・ハイタワーと、カルト教団「左手の小経」の元メンバー、元麻薬中毒者だったケイス・ハーディンが、ボブの娘ギャビ・グレイをさらった「左手の小経」を追い求める話。
 『その犬の歩むところ』が面白かったので過去に遡って手に取ってみたのだが、ここまで強烈な暗黒小説だとは思わなかった。とにかく暴力、ドラッグ、セックスのパレード。それが妙に飾り付けられた言葉で並びたてられる。それでも不思議に読めるのは、現在形が続く突き放した文体だからか。『その犬の歩むところ』の文体って処女作からだったのね、と妙なところに感心してしまった。ただ、やや荒っぽいことも事実で、正直読んでいて疲れる。
 アメリカならではの描写という気がしなくもない。まあここまで追って、追って、やられて、追っての展開は、ほんとうにしんどい。なぜここまで執拗に、という気もするし、逆にここまで書くから傑作と呼ばれているのかもしれないという気にもなる。好みで評価が非常に分かれるだろうな、とは思う。個人的には悪くなかったのだが、もう少しコンパクトにまとめてほしかったところ。