- 作者: 堀井拓馬
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/10/25
- メディア: 文庫
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2011年、第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。同年10月、ホラー文庫より発行。
死んだ愛妻を甦らせるというのは、それこそ神話の時代からあった話でありきたり。それを「ヌメリヒトモドキ」というグロテスクな生物から生み出そうという発想は結構凄い。ヌメリヒトモドキに恐怖感はないけれど、文体から滲み出てくる不快感は相当なものである。それと、イイジマ個体への拷問……もとい、実験は非道かったな。
日記の記述みたいな書き方も、終わってみるとそれほど読みづらくはなかった。最初は非道い文章だと思っていたが、読んでいる途中で慣れる文章だったのだろう。とはいえ、選評で言う「読みにくい」という指摘もわからないではない。応募作品を加筆修正しているとあるから、それなりに書き直しているのだろうが。
ただ、主人公と妻の距離感が今一つわかりにくい。一人語りだから仕方がないが、それでも後半の展開は違和感が残るし、結末のドンデン返しが今一つ盛り上がらない理由にもなっている。それと、カンナミ研究員が主人公に惚れている理由もよくわからない(まあ、これはどうでもいいか)。ヌメリヒトモドキという存在が出てくるのに、結局一個人の話で物語が終わってしまうのは残念。地球への影響をもうちょっと書いてほしかったところである。
執筆時23歳という若さには驚いた。筆力はある。次に何を書いてくれるのか、楽しみな作家である。