平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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山村美紗『燃えた花嫁』(光文社文庫)

 絞殺、青酸死、モデルが相次いで殺され、日進化繊が社運を賭した夢の繊維の売れ行きに暗雲がたちこめた。巻き返しを図り、首相令嬢の結婚衣装を提供。しかし、挙式直後ドレスが突如燃えあがり花嫁は無残にも焼死した! ファッション界の醜悪な内幕を背景に、お馴染み、キャサリンと浜口の名コンビが謎に挑戦する!(粗筋紹介より引用)
 1982年6月、カッパ・ノベルスより刊行。1985年7月、文庫化。

 

 『花と棺』『百人一首殺人事件』に続くキャサリンシリーズ第三作。前作から二年後という設定で、キャサリンターナーはマスコミ関係で働いており、本作では事件の発端となるファッションショーの取材で来日している。
 「絹のようにしなやか」な新しい人工皮革「シャレード」のファッションショー前夜にモデルが絞殺され、さらにショーのフィナーレ直前でモデルが使っていた口紅についていた精算で殺される。同じく「シャレード」を使ったウエディングドレスを着た首相令嬢が結婚式の控室で焼死し、数日後には同じ「シャレード」のドレスを着た女優が焼死する。
 派手すぎるほどの連続殺人なのに、出てくるのは京都府警のみ。舞台が京都だからそうなんだろうけれど、首相令嬢まで殺されたとなるともっと上の方から色々言ってきそうなものだが。また、「シャレード」のドレスに引火して焼死したというのなら、実験ぐらい行いそうなものだが。さらに女優は人体実験で殺される、とんでもない展開。いくら殺人だからとはいえ、叩かれても仕方ないだろう。
 焼死事件は密室殺人でもあるのだが、トリックははっきり言ってつまらない。こういう化学トリックはうまく見せないと、ただこうやれば殺せます、というだけの話になってしまい、ミステリとしての面白味は何もない。本作はまさにそういう作品である。
 コースターに残された名前の謎なんて、すぐにわからないか。検討しない方がおかしい、などと突っ込むところはいっぱいある。警察は人間関係を全然調べないし。これでキャサリンと浜口にもう少しロマンスがあれば楽しめるのだが、二年ぶりに会うのにそういう要素はほぼ皆無。物語としても楽しめるところがない。
 出張続きで疲れていたので、未読本の中から頭を空っぽにして読んでもそれなりに退屈しない作品を選んだつもりだったが、失敗。