平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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トム・ロブ・スミス『偽りの楽園』上下(新潮文庫)

偽りの楽園(上) (新潮文庫)

偽りの楽園(上) (新潮文庫)

 
偽りの楽園(下) (新潮文庫)

偽りの楽園(下) (新潮文庫)

 

 両親はスウェーデンで幸せな老後を送っていると思っていたダニエルに、父から電話がはいる。「お母さんは病気だ。精神病院に入院したが脱走した」。その直後、今度は母からの電話。「私は狂ってなんかいない。お父さんは悪事に手を染めているの。警察に連絡しないと」。両親のどちらを信じればいいのか途方に暮れるダニエル。そんな彼の前に、やがて様々な秘密、犯罪、陰謀が明らかに。(上巻粗筋紹介より引用)
 母と対面したダニエルは、スウェーデンの片田舎で蔓延る狂乱の宴、閉鎖された農場で起きた数々の悪事を聞かされる。しかも、母は持ってきたショルダーバッグの中から、それぞれの事件の証拠品を次々と提示していく。手帳、写真、新聞の切り抜き……。ダニエルは、その真相を確かめるべく、自身がスウェーデンへと向かった。そこで彼を待ち受けていたのは、驚愕の事実だった――。(下巻粗筋紹介より引用)
 2014年、発表。2015年8月、邦訳刊行。

 

 レオ・デミドフ三部作から4年後の作者の新刊。三部作はスケールが大きかったけれど、本作はスウェーデンの片田舎での出来事。かなり意外だったけれど、これはこれで何か面白い話になるのかなと期待していたんだけど……。
 ダニエルのところに精神病院から逃げ出した母親が来て、自分が遭遇した悪事について述べるのだが、これがなんと下巻の半分くらいまで続く。なんだかまとまりがないというか、長いというか。読んでいてイライラしてくる。下巻の後半になってようやくダニエルがスウェーデンに行き、あっさりと真相がわかってしまう。なんだ、この呂律の回らない物語は。
 うーん、つまらなかった、の一言に尽きるかな。題材自体は悪くないから、もっとちゃんと小説を書いてくれれば、滋味のあふれる佳作ぐらいにはなったような気がする。