平穏無事な日々を漂う〜漂泊旦那の日記〜

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若木未生『ハイスクール・オーラバスター・リファインド 千夜一夜の魔術師』(徳間書店 TOKUMA NOVELS)

 人の心の闇に憑き歴史の暗部に蠢く〈妖の者〉と〈神〉の識格をもってそれを退治する〈空の者〉。生身の人間では見届けられぬ、太古より続く両者の戦いに終止符が打たれる時が近づく。鏡の世界からひきもどされるも、三週間にわたって眠り続ける里見十九郎を巡るそれぞれの想いが交差する「緋色の糸の研究」、路地裏の隠れ家レストラン〈シェヘラザード〉を舞台とする不可思議な“契約"にまつわる物語「千夜一夜の魔術師」の中篇二篇を収録。大河シリーズ、完結へのカウントダウン、いよいよ佳境に!(粗筋紹介より引用)
 2019年10月、書下ろし刊行。

 

 前作から4年ぶりの新刊。シリーズ物がこのペースだと、本当に誰も読まなくなるんじゃないかと思ってしまう。前作から引き続き読んでみた。
 「緋色の糸の研究」は里見十九郎の同級生で友人である西城敦が主人公。「千夜一夜の魔術師」は、水沢諒、和泉希沙良、崎谷亮介、里見十九郎の思いが交錯するストーリー。西城が主人公ということもあってか、「緋色の糸の研究」は久しぶりにライトな部分に光が当てられた作品に仕上がっている。やっぱりこの雰囲気だよ、求めていたのは。そのペースで書かれたからか、「千夜一夜の魔術師」もそこまで重めになっておらず、読んでいても面白い。
 そんな雰囲気で書かれた作品ではあるが、前作の補完にもなっており、そして次作へのつなぎの役割も果たしている。短いながらも、割と重要な位置づけの作品集として、満足だった。ただ、女性陣が全く出てこなかったのには大いに不満であるが。
 作者のあとがきによると、次作がいよいよ完結編となるらしい。ようやくか。とはいえ、ナンバリングが当てられる可能性もあるし、簡単には終わらないだろうなあ。本作品集が2019年だから、次は早くても2023年かな。2年後か。